2009年3月13日金曜日

Rossi 2004


B. ケンプの指導のもとに書かれた博士論文が刊行されています。
「古代エジプトの建築と数学」というタイトルは、かなり派手に思われますけれども、これは類書がないためです。

Corinna Rossi,
Architecture and Mathematics in Ancient Egypt
(Cambridge University Press, Cambridge, 2004)
xxii, 280 p.

全体は3つのパートに分かれており、

Part I: Proportions in ancient Egyptian architecture
Part II: Ancient Egyptian sources; construction and representation of space
Part III: The geometry of pyramids

という構成です。

古代ギリシア建築の専門家として知られるクールトンが達成したことを、古代エジプト建築でもやろうとした意欲が良く伝わってきます。
クールトンはギリシア建築に黄金律を当てはめるようなそれまでの美術史学的な方法を一蹴し、建築を造るという実際の作業に即して分析を進めた研究者。建築研究を、美術史学的方法から建築史学的方法へと引き戻した人間として記憶されるようになるかと思います。
だからA. バダウィなど、これまで権威と考えられてきた者の考え方の否定がこの本では主な焦点となっており、この点は見逃せません。

最後にピラミッドの研究が挙げられており、いくつかに分類がなされているのは功績ですが、しかし特に目立った結論があるわけではない。
おそらく、セケドに関する考察が中途半端に終わっているからであるように感じられます。緩やかなスロープの勾配を、「セケドのような」方法で決定したとする言い方が端的に示しており、これもまた「セケド」であると言い切ってしまえば、ずいぶんと古代エジプト建築研究も進展するのですが。
「セケド」で問題となるのは、「縦と横とをひっくり返してもセケドと呼ぶことができるか」と言う点、また「1キュービットに対して1パーム、あるいは1キュービットに対して1ディジットと言ったようなものもセケドとして認められるか」というところです。セケドの概念の拡張に当たりますが、これを認めさえすれば、古代エジプト建築の研究は画期を迎えるように思われます。
鍵となるのは第一アナスタシ・パピルスの中の、いわゆる「オベリスクの問題」で、ピラミッドと同じように、斜めの面だけで構成されているオベリスクという特殊な形態がどのように決定されるのかについて、意図的に難しく、また省いて記されており、本当はこれこそが「古代エジプトの建築と数学」でまず中心に扱われるべき。ピラミッドの設計方法がリンド数学パピルスにしか書かれていないため、第一アナスタシ・パピルスにおける当該部分の記述はとても重要です。

ロッシはその後、イタリア語でエジプトに関する入門書などを出版しています。写真をメインにしたエジプトの遺跡の紹介をおこなったもの。トリノの本屋で見かけましたが、大判だったので購入を断念。

0 件のコメント:

コメントを投稿