2009年6月7日日曜日

Veldmeijer 2009


古代エジプト人がどんな靴を履いていたのかを専門に研究している人の連続論文のうちのひとつ。第16番目の論考。
こういうことを綿密に調べ上げようとしている人は世界に2〜3人しかいないので、最新研究を見れば、既往文献リストのほとんどすべてが入手できます。
ルーヴル美術館のエジプト部門から数年前に、古代エジプトのサンダルのカタログが出版され、へえーと思った記憶がありますが、こちらの内容も面白い。

André J. Veldmeijer,
"Studies of ancient Egyptian footwear.
Technological aspects. Part XVI. Leather Open Shoes",
in British Museum Studies in Ancient Egypt and Sudan (BMSAES) 11 (2009),
pp. 1-10.
http://www.britishmuseum.org/system_pages/holding_area/issue_11/veldmeijer.aspx


BMSAESは大英博物館から出されている電子ジャーナルで、無料にてダウンロードすることができます。PDFにて配信。カラー写真が豊富に掲載されている論文が多いのが特徴です。

Ancient Egyptian Footwear Project (AEFP)なるプロジェクトが進行中とのこと。まずは最後の参考文献から目を通すというのは、論考の範囲を知るための最初の手順であるわけですが、ツタンカーメンの履き物について報告書がもうすぐ出版されると言うことがここで分かります。
Tutankhamun's Footwearという題を持つことが予定されているこの本はしかし、単著ではなく、何人かの(しかも比較的多くの)共同執筆者がいるようで、その中にP. T. NicholsonやG. Vogelsang-Eastwoodが入っているのは理解できるとしても、J. A. Harrellが加わっているのは意外。
NicholsonはAncient Egyptian Material and Technology (Cambridge, 2000)の大著を纏めた片割れで有名、またVogelsang-Eastwoodは古代エジプトの衣服に関する稀な専門家。
でもHarrellは岩石学に基づく石切場の専門家で、彼がどのような文を書くのかは個人的に興味のあるところ。

Veldmeijerは、Footwear in Ancient Egyptという3巻本を出す予定であることも、参考文献リストで了解され、このように論文の参考文献リストというのは、自分の偉さを宣伝する学術的な広告の場でもあるということが良く分かります。
しかしこの人の場合は極端で、掲げている17の参考文献のうち、10本が自分が書いたもの。またその半数以上が"in press", "in preparation"で、一体どうなっているのか、良く分かりません。順番をつけ、一挙に提出したということでしょうか。
こういうことが有りなのだと、面白く思います。

文献リストで出ているオランダのJEOLという雑誌は、日本ではちょっと探しにくい専門誌。レイデン(ライデン)から出ており、正式名称は

Jaarbericht Ex Oriente Lux

です。NACSIS Webcatのページ、

http://webcat.nii.ac.jp/


にてこの雑誌のフルタイトルを検索すると、京大、東大、東海大、天理図書館などが持っていることが分かります。ただ、どこがどの号を所有しているかを確認することが必要。
実はこの他に購読している研究室はあると思われるのですが、そういうのはネット検索では通常、出てきません。
エジプト学関連では、同様にオランダのOMROなども、日本で見るには手数のかかる面倒な雑誌。でも、

http://www.saqqara.nl/excavations/publications


ではサッカラを中心としたオランダにおける研究成果を公開しており、最新の成果を知るにはとても便利です。
エジプト学に関連する雑誌名称の略記に関しては、Lexikon der Ägyptologieでリストがありますけれども、以前も触れたように、エジプト学者たちも多く加入しているEgyptologists' Electronic Forum(EEF)の"Bibliographical Abbreviations"のページ、

http://www.geocities.com/TimesSquare/Alley/4482/AHmag.html


で見ることもできます。

Egyptian Archaeology 33 (2008)でも見たようなサンダルの絵がFig. 4で出ており、こうした表現は素晴らしい。
革を使ってどのように靴が作られているのか、その図解も楽しめます。このFig. 2は、色も使って図示すれば、もっと分かりやすくなったはず。

つくば大学によるアコリス調査でも多数のサンダルが出土しており、こういう情報が今後、どのように反映されていくかも見て行きたいところです。

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