2009年8月12日水曜日

Killen 1980


古代エジプトの家具研究を専門とするキレンの第1冊目の本。家具を網羅しようとする姿勢が目次からも容易に推察することができます。箱などを扱う続巻はすでに1994年に出版されました。
古代エジプト家具の基本文献。この時代における仕口について言及されています。
2002年に再版が出ています。

Geoffrey P. Killen,
Ancient Egyptian Furniture, Vol. I:
4000-1300 BC
(Aris & Phillips, Warminster, 1980)
ix, 99 p., 118 plates.

Contents:
Abbreviations, vi
Acknowledgements, viii
Chapter One: Furniture Materials, p. 1
Chapter Two: Tools, p. 12
Chapter Three: Beds, p. 23
Chapter Four: Stools, p. 37
Chapter Five: Chairs, p. 51
Chapter Six: Tables, p. 64
Chapter Seven: Vase Stands, p. 69
Catalogue of Museum Collections, p. 73
Plates

巻末の、各国の博物館に収蔵されている家具のリストは重宝です。ただし完全なリストではありません。アルファベット順の国別に掲載されていますが、イタリアではトリノ・エジプト博物館収蔵のものの抜粋しか挙げられず、またフィレンツェ考古学博物館やボローニャの博物館なども載っていません。
リストに家具の所有者、新王国時代第18王朝の建築家カーの名前が書き込まれなかったのは残念です。参考文献にはE. Schiaparelliによる報告書が見られるのですけれども。エジプト学で通常要請される、こうした配慮があまりなされていないために、この書籍の価値は相対的に低くなりがちです。

微妙な言い回しがなされている部分があって、家具がどのように発展していったかについて記されている箇所では、慎重な検討が必要です。H. G. Fischerが言っていることと矛盾する記述もうかがわれ、今後の研究の進展が待たれます。

M. Eaton-Kraussがトゥトアンクアメン(ツタンカーメン)の椅子に関する本を2008年に出版しているので、ほぼ30年ほど経って、どのくらい研究が進んでいるかを見ることができるのも興味深い点です。家具研究は、少人数の研究者によって進められている分野。
もっとも、立場が異なるわけで、キレンは家具職人としての視点から調査を持続しています。実在する椅子と、当時の家具の名称との関連の研究はJac. J. Janssenなどが調べており、値段もまた、彼によって言及されています。こうした成果も踏まえ、多様な姿で存在していた家具がどのように使い分けられたかが問われるところ。

彼はサイトも開設しているということを前にも書きました。ここで彼の著作のリストを見ることができます。

http://www.geocities.com/gpkillen/

Bibliographyの欄には、かつてはエジプト家具に関する文献を掲載していましたが、現在ではすべて削除されて、自分の著作のみを代わりに掲載。Shaw and Nicholson (eds.) 2000の家具に関連する項目でキレンが書いている参考文献リストの改訂版を、そろそろ見ることができたら良いのですけれども。

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