2009年8月27日木曜日

Leospo 2001


古代エジプトにおける木製の遺物のすべてを扱っているかのようなタイトルですが、家具がかなり含まれています。仕口と継手の図示が注目されるところ。
カラーページが豊富に掲載されており、大変見やすい構成。トリノ・エジプト博物館に収蔵されているものが紹介されている冊子です。
イタリアには保存状態の良い古代エジプトの家具が収蔵されていて、これは主として19世紀頃にエジプトへ行ったイタリア人たちの功績です。しかしその詳細が世界にあまり知られていません。もはや出土場所も分からないものが少なくないとは言え、ボローニャやフィレンツェなどの博物館はとても良い家具を持っています。
特にトリノには、建築家カーの墓に収められていた家具が一式揃っていて、見応えがあります。E. スキアパレッリによるディール・アル=マディーナ調査の成果。墓の木製戸口まで取り出し、イタリアに持ち帰っており、驚かされます。
この博物館には巨大な遺物はあんまりないのですが、王名パピルスや、王家の谷の墓の平面図が描かれたパピルスなどが展示されており、これらは非常に貴重。

Enrichetta Leospo,
The Art of Woodworking.
Quaderni del Museo Egizio
(Electa, Milano, 2001)
54 p.

しかしこの本は、別に出されている3巻本の"Daily Life"の巻の中でうかがわれる内容とそっくりで、下記の3冊を御存知であるならば見る必要はありません。トリノが収蔵している名品をカラーで紹介しながら信仰や日常生活、記念建造物などを述べたシリーズで、良くできています。

Anna Maria Donadoni Roveri ed.,
Egyptian Museum of Turin: Egyptian Civilization, 3 vols.
(1988-1989).

Religious Beliefs
(Electa, Milano, 1988)
261 p.

Daily Life
(Electa, Milano, 1988)
262 p.

Monumental Art
(Electa, Milano, 1989)
261 p.

トリノ博物館は現在、大規模な展示の模様替えを模索しているところ。館長が替わり、出版にも今後、力を入れたい様子です。
トリノ博物館から出ているカタログは刊行中。

Catalogo generale del Museo Egizio di Torino (CGT)

と呼ばれ、これも日本ではなかなか全部が揃えられていない出版物であるように思われます。

http://www.archaeogate.org/egittologia/article/187/1/il-catalogo-generale-del-museo-egizio-di-torino-a-cura.html

では、CGTの経緯や既刊分のリストを4ページにわたってイタリアのエジプト学者A. Roccatiが説明。Moiso (ed.) 2008のところでも、この既刊分のリストについては触れました。

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