2009年12月9日水曜日

Clagett 1989-1999


10年をかけて刊行された「古代エジプトの科学」の全3巻本。アメリカ哲学学会から出版されています。3冊で2000ページ近くに及びますが、ペーパーバックでも出ていますから、比較的安価で入手できるはず。

Marshall Clagett,
Ancient Egyptian Science: A Source Book, 3 vols.

Vol. I. Knowledge and Order.
Memoirs of the American Philosophical Society held at Philadelphia for promoting useful knowledge, Vol. 184
(American Philosophical Society, Philadelphia, 1989)
xx, 863 p.

Vol. II. Calendars, Clocks, and Astronomy.
Memoirs of the American Philosophical Society held at Philadelphia for promoting useful knowledge, Vol. 214
(American Philosophical Society, Philadelphia, 1995)
xvi, 575 p., 106 figures.

Vol. III. Ancient Egyptian Mathematics.
Memoirs of the American Philosophical Society held at Philadelphia for promoting useful knowledge, Vol. 232
(American Philosophical Society, Philadelphia, 1999)
xi, 462 p.

古代エジプトで展開した科学技術は、ギリシア世界にも畏敬の念を持って迎え入れられました。エジプト人たちは自分たちのことを古代エジプト語で「ケメト Kemet」と呼びましたが、この語はもともと「黒い土」という意味で、「赤い土=砂漠」である「デシェレト Desheret」と対概念をなします。

「ケメト」という語はその後、物質をさまざまに反応させて姿や性質を変えさせる技術である化学「ケミストリー Chemistry」の語源となったという説が良く引用されます。アラビア語の定冠詞「アル al-」がつくと「アルケミー Alchemy」となり、これは「錬金術」のこと。
「賢者の石」でファンタジーでもしばしば取り扱われる有名な技術ですが、近代科学の父であるアイザック・ニュートンも、実は真面目に取り組んでいました。
第2巻は古代エジプトにおける時間概念を扱った本。暦や天文学が主題とされています。

第3巻の、古代エジプトの数学を述べた巻は有用で、概観するには便利な本。代表的なリンド数学パピルスを詳細に紹介したピート、あるいはチェイスによる刊行物は、現在、入手が難しい状況です。ロビンスとシュートによる簡便な本も出ていますが、場合によっては端折り過ぎと見られるかもしれません。
古代語が読める数学者によって書かれた本、Imhausen 2003は詳しいものの、ドイツ語で記されており、敷居は若干高くなります。

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