2009年12月13日日曜日

Lepsius 1865 (English ed. 2000)


古代エジプトで使われた尺度について述べられた、きわめて重要な本。にも関わらず、本当は誰も詳しく読んでいなかったという奇妙な経緯があります。
初めての英語訳です。編者が最初に、「世界で初版が9冊だけ確認されている」と書いています。再版も出ていましたが、この英訳が出たおかげでレプシウスの考えが広く知られることになりました。

Richard Lepsius,
The Ancient Egyptian Cubit and its Subdivision 1865.
Including a Reprint of the Complete Original Text with Two Appendices and Five Half Scale Plates.
Translated by J. Degreef, with expanded bibliographical notes on the works cited by Lepsius and brief biographical notes on their authors.
Compiled by Bruce Friedman and Michael Tilgner.
Edited by Michael St. John.
(The Museum Bookshop Ltd., London, 2000)
67 p. + 67 p., 5 Tafeln, xx.

Original:
Richard Lepsius,
Die alt-aegyptische Elle und ihre Eintheilung.
Abhandlungen der philosophisch- historischen Klasse der königl. Akademie der Wissenschaften zu Berlin
(Königlichen Akademie der Wissenschaften, Berlin, 1865. Reprint, LTR-Verlag, Bad Honnef, 1982)
(ii), 63 p., 5 folded figures.

大科学者アイザック・ニュートンの名がここで見られるのは面白い(Newton 1737)。ナポレオンによる「エジプト誌」の文章編にたくさん書いているジョマールの論考にも言及しています。
200年以上にわたってエジプトの尺度が考え続けられ、今なお結論が出ていないことを伝える不思議な書。

1997年に出たマーク・レーナーの"Complete Pyramids"では、アイザック・ニュートンに言及していなかったはず。
2007年のジョン・ローマーによる"The Great Pyramid: Ancient Egypt Revisited"(Romer 2007)ではしかし、ニュートンの業績について触れられています。最近でもMDAIKの発掘調査報告でニュートンの果たした役割について見かけましたが、編者のM. セント・ジョンの功績を称えるべきだと思います。
この人はポルトガル在住で、エジプトの物差しに興味を持っている方。新王国時代の物差しについての薄い本を出版しています。

Michael St. John,
Three Cubits Compared
(Estoi, Portugal, 2000)
i, 39 p.

長さ52.5cmの王尺(ロイヤル・キュービット)の他に、エジプトでは長さ45cmの小キュービットも用いられていた、という記述はあちこちで見受けられますが、その根拠が実はあやふやであることが、このレプシウスを読むと良く分かります。「王尺は建物に、そして小キュービット尺は家具などに用いられた」などという巷の説を、そのまま信じるべきではありません。建築と美術史とでは見方が異なる点にも注意。
エジプトの尺度について述べている文章で、この本に触れていないものは皆無であると言っていいと思います。あらゆる論考がこの本に戻ってきています。
でもその内容は入り組んでおり、今後も詳しく討議されるべき。

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