2010年1月12日火曜日

Bruguier 1998-1999


カンボジアに残存するすべての遺構に関し、情報の網羅をめざした基礎台帳。最も基本となる文献です。東南アジア建築研究に際しては必携の書。遺構名からも、また著者名からも文献資料を検索することができます。第1巻は著作リストです。また第2巻は遺構番号や遺構名から引くための索引集。
エジプト学における、PMPorter and Moss, 8 vols. に相当する本。

Bruno Bruguier,
avec la collaboration de Phann Nady,
Bibliographie du Cambodge ancien, 2 vols.

Vol. I: Corpus bibliographique
(Ecole Francaise d'Extreme-Orient, Paris, 1998)
338 pp.

Vol. II: Tables et index
(Ecole Francaise d'Extreme-Orient, Paris, 1999)
367 pp.

例えば上智大学の石澤良昭先生による海外に向けた研究業績を調べたいのであれば、第1巻で "Ishizawa (Yoshiaki)" を引きます。
すると、pp. 172-179にかけて、延々と論文リストが並ぶさまを見ることができます。

また、アンコール・ワットについてどれだけ既往の研究資料があるのかを調べたかったら、第2巻を見ます。"Angkor Vat"の項を引くと、pp. 74-78にわたって数字・英文字の羅列が続きます。
これらはパリに本部があるフランス極東学院(EFEO: Ecole Francaise d'Extreme-Orient)に収蔵されている調査日誌のページ数や、省略して書かれた数多くの著作・論文名を列記したもの。
図面がどれだけ存在するかも同時に分かります。

ただし、10年前に出版されたものなので、最新の研究成果は反映されていません。
さらに問題なのは、未刊行資料が多いということです。実際に資料を見ようとすると、パリに行かなくてはならない(!)場合も出てくるように思われます。

半ば絶望を誘う書ですが,クメールの遺跡群に関する考察の糸口を見つけるための重要な本。書評では、ヨーロッパ主要国以外の研究者たちの論考が抜けている点などが指摘されてもいますが、PMだって初版はそんな感じのものでした。
エジプト学に関わる文献の一切を網羅しようとしているOEBOnline Egyptological Bibliographyのような試みが、次には模索されるかと想像されます。OEBの年間使用料は今、個人で申し込むと50ユーロ(7000円弱)。

0 件のコメント:

コメントを投稿