2008年12月31日水曜日

Moiso (ed.) 2008


イタリアのエジプト学で活躍したE. スキアパレッリに関する書。
たくさんの人が原稿を寄せていますが、S. Donadoni, S. Curto, M. C. Guidotti, A. Rocatti, A. M. Donadoni Roveri, S. Einaudiなど、いずれもこの国で知られている人ばかりです。
この国のエジプト学は女性が牽引している側面があり、上記のグイドッティはフィレンツェ考古学博物館の館長、アンナ・マリア・ドナドーニ・ロヴェリは前トリノ・エジプト博物館の館長。トリノ博の現館長であるエレーニ・ヴァシリカ、またピサ大学のエジプト学を率いているエッダ・ブレスキアーニも女性です。グイドッティのところには小さな子供を連れて調査に行ったり無謀なことをした時も、親切に受け入れてくれたりしました。

Beppe Moiso (a cura di),
Ernesto Schiaparelli e la tomba di Kha
(Adarte, Torino, 2008)
330 p.

「エルネスト・スキアパレッリとカーの墓」という題の本で、学者たちを輩出した彼の家系図が掲載されていたり、発掘途中のデル・エル=メディーナ(ディール・アル=マディーナ)の写真、また発見されたカーの墓内に遺物が並んでいる写真など、貴重な資料が豊富です。Schiaparelli 1927のところで書きましたが、一族の中では天文学者ジョヴァンニ(ジョバンニ)・スキアパレッリが有名。ファッション・デザイナーで一世を風靡したエルザ・スキアパレッリも親戚。

1902年から1920年までの間の、彼が率いたイタリア隊による発掘調査の経緯も纏められていて、ここの部分があるいは最も重要かもしれません。
1905年から1906年にかけてはアシュート、デル・エル=メディーナ、女王の谷、カウ・エル=ケビール、アシュムネイン(ヘルモポリス)、ヘリオポリスなど、多数の地域を手がけていたことなどが分かり、この点は知りませんでした。彼の野帳も掲載されています。

「スキアパレッリの仲間たち」というページも設けられており、興味深いのですが、参考文献の欄にはイタリアで刊行された関連論文が並んでいるなど、これもまた重要です。もちろん、スキアパレッリの経歴も充分に紹介されています。

イタリアにおけるエジプト学の様子を垣間見ることのできる本です。
イギリスでピートリーに関し、こういう本が出ているかというと、伝記が近年出たばかりであるはず。例えば、フランスにおけるシャンポリオンの位置づけと同じなのだと考えると、理解がしやすいのかもしれません。本国で大切に考えられている研究者なのだということが良く了解されます。

トリノ・エジプト博物館がこれまで刊行しているカタログがリストとして挙げられている(p. 310)のも便利。これはカイロのエジプト博物館から出されている"CGC"と似た名称の、"CGT"として知られているシリーズですが、現在では入手するのが非常に苦労するものもいくつかあります。

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